痛みが消えただけでは終わっていないかもしれません
こんにちは。整体院しん院長の今井です。
「ぎっくり腰」と聞くと、「重い物を持った瞬間に腰をひねって痛める」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
重い荷物を持ち上げた時だけでなく、何気ない動作がきっかけになることもあります。顔を洗おうと前かがみになった時、床の物を拾った時、座ったまま少し遠くの物へ手を伸ばした時など、「こんなことで?」と思うような場面で突然強い痛みが走ることもあります。
ここで大切なのは、痛みが出た最後の一動作だけを原因と考えないことです。ぎっくり腰を含む急な腰痛は、必ずしも「腰の何かが大きく壊れた」と特定できるものばかりではありません。
腰周囲の組織に急な負担が加わって強く痛むことがありますが、その背景には以前からの身体の硬さや使い方が関係することがあります。
例えば、腰周りの筋肉が常に張っている、長時間同じ姿勢が続いている、股関節や胸郭が十分に動いていない。このような状態では、本来は股関節や胸郭が分担するはずの動きを腰が代わりに引き受けやすくなります。
身体をひねる、前にかがむ、手を伸ばすといった日常動作のたびに腰へ負担が集中し、それが積み重なったところへ急な力が加わると、強い腰痛につながることがあります。
当院で特に注目しているのが、骨盤や下半身が固定された状態で、腕だけを遠くへ伸ばす動作です。
例えばソファに座ったまま、少し遠くにあるリモコンを取ろうとしたとします。骨盤や下半身はソファに固定されているのに、肩甲骨と腕だけは前へ大きく伸びていきます。すると背中から腰にかけて強く引き伸ばされるような力が加わります。
これはリモコンに限りません。棚の奥の物を取る、ベッド上で物に手を伸ばす、介護で相手を支えながら腕を前へ伸ばすなど、足元や骨盤が動けないまま上半身だけを遠くへ伸ばす場面は日常の中にたくさんあります。
特に腰や太ももの裏が硬く、胸郭や股関節も動きにくい方では、こうした動きの負担が腰に集中しやすくなります。
もう一つ意識してほしいのが肘の使い方です。肘をピンと伸ばしたまま遠くの物を持とうとすると、物と身体との距離が遠くなります。身体から離れた位置で物を扱うほど、腰には大きな負担がかかりやすくなります。
そのため、物を取る時は一歩近づき、肘を曲げて身体の近くで扱うことが大切です。
介護や看護、子育てなど、人を支えたり抱えたりする機会が多い方にも同じ考え方が使えます。
両足を揃えて膝を伸ばしたまま踏ん張り、そこから腕だけを伸ばすと、腰が動きを引き受けやすくなります。片足を一歩前に出して重心移動できるようにすると、腕と腰だけで支える動作を減らしやすくなります。
ぎっくり腰では、寝返りや立ち上がりなど少し身体を動かしただけでも鋭い痛みが走り、「ヘルニアになったのでは」「腰が壊れたのでは」と不安になる方も少なくありません。
しかし、痛みの強さだけで腰の損傷の大きさを判断することはできません。 多くの腰痛は、特定の重大な病気や構造的異常だけでは説明できない非特異的腰痛に分類されます。
痛みが強い直後に無理をする必要はありませんが、「動いたら壊れる」と必要以上に怖がって身体をまったく動かさなくなることも避けたいところです。
問題は、数日から数週間で痛みが落ち着いた時です。痛みがなくなると、多くの方は「治った」と考えます。
しかし、なぜ腰に負担が集中したのか、股関節や胸郭は動いているのか、物を取る時にいつも腕だけを伸ばしていないか、といった部分が変わらなければ、同じような負担を繰り返す可能性があります。痛みを取ることと、再び腰に負担が集中しにくい身体をつくることは別の問題なんですね。
予防として意識したいことは難しくありません。
①遠くの物を取る時は、腕だけを伸ばさず自分から一歩近づく。
②物を持つ時は肘を伸ばし切らず、できるだけ身体の近くで扱う。
③腰だけを揉むのではなく、股関節、胸郭、骨盤、太ももの裏、腕や前腕など、腰の動きに関係する部分も日頃から動かしておく。
この3つを意識するだけでも、腰だけに負担を集めない身体の使い方につながりますよ。
一方で、「ぎっくり腰だと思っていたら別の病気だった」という可能性はあります。
足に力が入りにくい、しびれや麻痺が急に強くなった、排尿や排便に異常がある、発熱を伴う、大きな転倒や事故の後に痛みが出たなどの場合は、まず医療機関での評価が必要です。
すべての急性腰痛で最初からレントゲンやMRIが必要というわけではありませんが、症状によっては画像検査を含めた医学的評価が必要になります。
ぎっくり腰は「たまたま腰をひねったから起きた」と単純に考えるのではなく、それまで腰にどのような負担が集まっていたのかを見ることが大切です。
腰だけでなく、股関節や胸郭、骨盤、そして腕の使い方まで見ていくと、「なぜ自分は繰り返しているのか」が見えてくることがあります。
痛みが引いたところで終わらせず、次に同じ痛みを起こさない身体の使い方まで考えることが、ぎっくり腰を繰り返さないための第一歩ですよ。